【公共交通機関で登山】登山の行程を決めるときに考えていること《行きたい山と行ける山》

冬本番。壮大で過酷な雪山の美しさに、心を惹かれる人は多いはず。

私も憧れはあるし、雪山のすばらしい写真や動画を目にすると、「あの景色を生で見てみたい。」という気持ちにはなります。

けれど、私は本格的な雪山登山はしません。自分には合わないだろうと思っているからです。

なぜ合わないと思うのか、私が山に求めているのは何なのかと考えるうちに「行きたい山」と「行ける山」は違うからだという、自分なりの答えに行きつきました。

この、「行きたい山」と「行ける山」は違うというのは、言うまでもない、当たり前のことです。ですが、「行きたい山」が優先されてしまうこともけっこう多いのではと思うのです。

今回は、この当たり前の気づきについて自分なりに言語化しながら、登山をする山をどのように決めているのか、計画を立てるときにはどんなことを考えているのか、ということについてまとめてみたいと思います。

今回の記事は、あくまでも登山の行程に限った話となります。実際に計画を立てる際には、装備や食料などについても考える必要があります。趣味として登山を楽しむ、一個人が考えていることとして、捉えてください。

「行きたい山」と「行ける山」は違う

「行きたい山」とは

私が思う「行きたい山」とは、山のレベルに関係なく行ってみたい、訪れてみたい、登ってみたいと思える山です。

行きたい山が憧れの山であることも多いと思います。

「行きたい」とか「行ってみたい」、「憧れ」には、実現可能性は含まれないような気がします。

例えば、旅行帰りの友人が「マチュピチュ、最高だったよ。絶対行くべきだよ。」と言った場合、「いいな!行きたい!」となります。マチュピチュがどんなに遠くて、どんなに行くことが難しい場所であったとしても、マチュピチュは「行きたい」「憧れ」の場所になります。

私が「行きたい山」に出会うのは、テレビや雑誌、本、YouTubeやinstagram。そして、ヤマレコやYAMAP、登山ブログなどが多いです。

マチュピチュの例のように、友人の話や写真なども「行きたい山」との出会いになる人も多いと思います。

「行ける山」とは

一方で、「行ける山」とは、山に登って安全に帰ってくることのできる山、と考えています。

日程的にも、アクセス的にも、そして体力的にも技術的にも実現可能な山です。

数年前、山小屋の前で出会ったベテラン登山者さんから、利尻山や礼文島の話を聞いて以来、いつか「行ってみたい」と憧れ続けています。まさに「行きたい山」です。

しかし、私にとっては遠い土地。

島までのアクセスにも時間がかかるし、登山やハイキングをするとなると、丸一日はほしいところ。せっかく行くなら登山だけじゃなくて、のんびり島の魅力を味わいたい。そもそも、利尻山のコースタイムは10時間と聞くし、体力的に大丈夫かな。夏に登るとしても、今まで登ってきた山とはかなり気候も違うだろうし、登れるだろうか。

なんていう現実的なことを考えていると、「行きたい山」ではあっても「行ける山」にはなりにくいのです。

先ほど挙げた、本格的な冬山は、暑がりで寒がりで恐怖心が強い私には、合わないと思っています。身体的な問題で、寒すぎるところにとどまり続けるのが怖いという事情もあります。

また、唐松岳に登った際には、目の前に広がった山の岩肌に大興奮し、夢中で写真を撮り続けたほど、山のゴツゴツした部分が好きなのですが、私にとって、ある一定レベル以上の岩は目で見て楽しむものであって、技術的にも体力的にも「行ける山」ではありません。

「行きたくて、行ける山」の中から、登山計画を立てる」

「行きたい山」があるから、人は登山をするのだと思っています。

体力づくりや健康の維持が目的の人もいますが、それだけで登山を選ぶことは多くないような気がします。わざわざ登山口まで行って、ケガや遭難のリスクを伴う登山をするからには、街中でのランニングやジムでのワークアウトなどにはない、魅力があるからではないでしょうか。(もちろん、山の中や麓に住んでいるならば、話は変わってきます。)

私は「行きたい山」を見つけると、ワクワクした気持ちを感じます。

印象的だったのは、尾瀬の山小屋に泊まったときのこと。なるべく同じ山を選択せずに山登りを楽しみたい私でさえ、何度も行っている大好きなエリアです。

確か、歯磨きをしようと思って山小屋の廊下を歩いていたとき、目に入ったポスターにくぎ付けになってしまいました。

それは会津駒ヶ岳のポスターでした。名前は知っていたけれどよく知らなかった山が、一気に「行きたい山」になりました。

残念ながら、まだ会津駒ヶ岳に行ったことはありません。それは、タイミング的に「行ける山」に入らないことが多いからです。

「行きたい」だけでは山には行けません。仕事もあって、家族もいて。お金にも限りがあります。いつか、会津駒ヶ岳が私にとっての「行きたくて、行ける山」になったときに、念願叶うのだと思います。

登山を終えて帰路につく頃には、頭の中は“次はどこの山へ行こうか”、“いつ行けるか”、そんなことばかり考えています。次の「行きたくて、行ける山」探しに夢中です。

計画を立てる行程も楽しくて、人に押しつぶされて心を「無」にするしかない通勤時間も、ワクワクした時間に変わります。

「行きたくて、行ける山」を見つける 登山の行程を決めるまでの5ステップ

ここからは、登山の行程を決めるまでにどんな段階を踏んでいるのかを考えてみます。

STEP1 「行きたい山」から候補を決める

最近、東京都・神奈川県・山梨県の境で冬の低山歩きを楽しんできました。

行き先を決めるまでにはたくさんの選択肢がありました。山を決めるまでも悩みましたし、コースを決めるまでにもいろいろ考えました。

まずは、「行きたい山」から候補を出します。既に知っている山が候補になることもありますが、「この時期に良さそうな山ないかな~」という感じで、情報収集するところから始まることもあります。

実際には、「行きたい山」探しと「行ける山」探しが、同時並行なことも多いかもしれませんし、はっきりと分けて考えられるものでもないかもしれません。

けれど、あえて分類するなら、今回「行きたい山」を選択する上でのキーワードとして挙がったのは、

  • 東京近郊の低山
  • 富士山がよく見える
  • コースタイム短め
  • 簡単な山ご飯を食べられる場所がある

そして、「行ける山」のキーワードとしては、

  • 日帰り
  • 公共交通機関でアクセス可能
  • 公共交通機関の待ち時間が長すぎない(寒さ対策)
  • 雪があるとしても、チェーンスパイクで対応可能な程度

こんな感じです。

STEP2  体力レベル・技術レベルを考える

「行きたい山」が「行ける山」なのかを考えるときに大事にしたいのが、体力レベル・技術レベル

同行するメンバーのことも考える必要があります。

SNSだけを情報源にすると、この点の情報収集がおろそかになると思っています。SNS上には、凡人には考えられない速さで歩く人や、リスクは承知の上で技術を磨き、自己責任で危険な山に挑む人が本当にたくさんいます。

そうした人は「自分はすごい人です」というアピールをするわけではないので、なんでもないように書いていて、実は到底真似できない体力レベル・技術レベルでの話だったりするのです。

登山に慣れていれば、自分とその人のレベルの差に気づきやすいとは思います。初心者で、かつ「行けるっしょ。」という精神の人であるほど、危険性に気づかない可能性が高まります。

確実性の高い情報を当たれ 体力・技術編

登山に関する情報収集をする上でのSNSの役割を意識するようにしています。きれいな動画や写真、わかりやすい説明は、「行きたい山」を選定し、登山に対するモチベーションを上げるために欠かせません。

また、SNSの山行記録は最新情報を得るのに役立つことも多いので、こうした点ではとても有効だと思っています。ビジターセンターなどの公式の情報よりも、最新で細かい情報を得られることも多いので、とても助かっています。

けれど、それと同時に、確実性の高い情報に当たることも非常に重要だと思います。自治体やビジターセンターなどの公式サイトの情報、山と渓谷などの出版社が出している登山ガイドなどです。

同じ山でもコースによって難易度が変わります。信頼のおける情報をもとに、体力的に技術的に「行ける山」なのかを考えます。

STEP3 アクセスを考える

「行きたい山」が、体力的にも技術的にも行ける!となっても、公共交通機関利用者はここでつまずくことが本当に多いと思います。どうしても、動ける時間が時刻表に左右されてしまうからです。

乗り継ぎが悪かったり、始発の時刻が遅かったり、帰りの手段がなかったり。タクシーがあっても、台数が少なくて出せませんと言われてしまうこともあります。

特に冬季は、バスの運休や通行止めがけっこうあるので、夏に行ったことがあっても調べ直す必要があります。

また、山のあるエリアは人口が減少していることが多いので、バスが廃線になってしまうことも少なくないです。過去の記録を見て行きたいと思ったのに、調べ直すとバスがもうない…ということも数々経験しました。

さらに、近年よく見るのが、「当面はバスを運休します。」という文字。人手不足が理由の一つとしてあるようです。

確実性の高い情報を当たれ アクセス編

ネット上には、電車やバスの時刻を記してくれている親切な記録がたくさんありますが、あくまでも参考にする程度とし、必ず自分で最新情報を調べましょう。ここを怠る大変なことになります。

実際に私の経験を2つご紹介します。

調べてよかった、ユーシン渓谷通行止め

2017年晩秋。丹沢のユーシン渓谷にハイキングに行きました。

ヘッドライトがないと全く見えなくなってしまう真っ暗なトンネル。ユーシンブルーと呼ばれる真っ青なダム。鮮やかな紅葉と、廃墟となってしまったユーシンロッジの周囲に集まる人たち。

とても楽しくて、思い出深いハイキングだったので、また行きたいと思っていました。

登山よりも気軽に歩けるので、コロナ前に友人を連れて行くことを計画しました。アクセス方法も知っているし、道もだいたいわかっているので大丈夫かな。

そう思いつつも念のため調べると、土砂崩れによって通行止めになっていることがわかりました。通行止めになっているということは、危険性があるということ。さらなる土砂崩れが起きる可能性もあります。当時のSNS上には自己責任で歩いた人の記録も上がっており、その情報だけを鵜呑みにしたら私も友人を連れて行っていたかもしれません。

大ピンチ、時刻表が変わっている

もう一つのエピソードは、去年のゴールデンウィーク。

周囲の環境的に命に関わることはない状況でしたが、場所によっては危険性の高い、大反省したできごとです。

ある有名な山の登山を終えて意気揚々と下山し、バスの時刻表を見たら、数時間先までバスが来ないことが発覚!

幸い電波があったので調べ直すと、私と友人が頼りにしていた時刻表が前年度以前のものであったことがわかりました。ネット検索で出てきて、最新のものだと思い込んでいたのです。いつも、相手任せにせずに、情報を互いに確認するようにしていたのに。まさかです。

徒歩で街まで行くには、と思って検索すると、「徒歩7時間」の表示。周りには、別荘なのか、普通の住宅なのか、家はありますが徒歩7時間とはあまりに遠い。結局、タクシーを呼ぶことにしました。

ところが、ゴールデンウィーク中で、有名観光地が近いこともあって、タクシーがなかなかつかまりません。奇跡的に、何件目かにかけたタクシー会社に何とか迎車をお願いでき、事なきを得ました。

これが完全に人里離れたエリアだったら。バスが数時間後にあるのではなく、もうその日のバスがなかったら。登山口で一夜を明かすことになっていたかもしれません。

それからは、検索して一発目で出てきたpdfは過信せず、バス会社のサイトなどから確実に情報を辿るようにしています。

STEP4 自宅を出てから帰るまでのスケジュールを考える

ここまでくれば、「行きたくて、行ける山」としての登山できる可能性は、ぐっと上がります。

ところが、宿泊を伴うなど遠方になると、まだまだ考えることがたくさんあるのです。

  • 宿泊地の選定。予約の仕方の確認。(山小屋の場合、予約の手段や開始時期は様々。もう既に空いていないことも。)
  • 山では使わない荷物の保管方法。ロッカーはあるのか?
  • 登山後の入浴場所。(お風呂に入らないまま、新幹線に乗るわけにはいかない。)

などなど。とにかく、綿密な行程の確認が必要で、そのために収集しなくてはいけない情報があまりに多く、ワクワクを通り越して疲れます。そして、いろいろ調べた結果、実現しないとわかったときのがっかり感と言ったら…。

この項目だけで、一つ記事が書けそうなほど、いろいろ思うところがあるので、今回はこのくらいにしておきます。

STEP5 行けるかどうかの判断を続ける

ここまで考えても、「本当に行けるかどうか」の判断は続ける必要があります。

  • 天候:晴れ・雨だけではなく、気温や風速などもチェック
  • 登山道:雪や倒木、土砂崩れなどの情報を確認
  • 体調:病気はもちろん、寝不足や日々の疲れも要注意

ここまで5つのステップを書いてきて、「なんてメンドクサイことを毎回こんなにしてるんだろう」と思ってしまいました。それを上回る山の魅力があるからなんでしょうね。

このメンドクサイ過程が安全に帰ってくるために必要だと知っているからというのもあると思います。

家族を悲しませたくない。ちゃんと準備をしている安心感を与えて、快く山に送り出してもらえるようにしたいというのも大きな理由です。

「行きたい山」の傾向から、自分の山の好みがわかる

それほどまでにして、「行きたくて、行ける山」に登る目的は何なのか。人それぞれですが、「行きたい山」の傾向から、自分が山に登る目的や、登山で大事にしていることがわかるような気がします。

私の登山で優先度が高いのは、非日常感、花、新緑・紅葉、一面に山が広がる壮大な景色を見たときの圧倒される感覚、山ご飯、などがあります。

だから富士山山頂には登ったことがありません。人の少ない、自然に囲まれる時間を求めています。

でも、目的が「花」や「壮大な景色」のときは、人気で混雑した山に行くことはあります。時間帯をずらすなどして、できる限り自分が快適でいられるように工夫しています。

憧れの「行きたい山」が「行きたくて、行ける山」に

2023年7月、憧れの秋田駒ヶ岳に登ってきました。前年に台風とともに計画が吹っ飛び、悔し涙を流したたえ、“ムーミン谷”のチングルマの群生を見れたときは、天国にいるような気分でした。

今年のゴールデンウィークには、長年「行きたい山」として心の中にあった、ある山に行く予定です。交通手段など、まだ予約できていないものがあり、天気も含めて実現できるかわかりませんが「行きたくて、行けた山」がまた一つ増えるのでは、と楽しみにしています。

実現できたなら、登山の記録をこのブログに書きたいと思います。

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